診療について
周術期麻酔
年間約5800件の手術麻酔(各科で担当される局所麻酔症例を除く)に安全かつ円滑に対応するためには、チームアプローチによる麻酔管理が重要です。そのため、麻酔科医同士はもちろんコメディカルのスタッフと協力しながら質の高い診療を実践・提供できる、協調性を持った人材育成を最も重視しています。
手術麻酔には診療科の数だけバリエーションがあり、手術内容によってさらに細分化されます。当院では専門医取得のための必須経験症例だけでなく、新生児手術や腎臓移植、小児心臓手術など専門性の高い多様な症例も経験可能。また2024年に本学附属病院が救命救急センターとして認可され、多発外傷など緊急手術も増加しています。
麻酔科医として目指してほしいのは、まんべんなく症例経験を重ねて偏りなく活躍できる外科診療における「Generalist」。同時にサブスペシャリティ領域の研鑽も幅広くサポートし、専門医取得後は充実した指導体制のもとで各科領域の麻酔に関する専門的知識とスキルを身につけていきます。基礎研究・臨床研究に取り組む環境も整備されており、フィジシャン・サイエンティストとしての道を究めることも可能です。
私たちは、専門領域に限らない、「General」に活躍できる「Specialist」の育成を目指しています。
集中治療部
当院ICUは成人を主に対象とするICUが6床、PICU(小児ICU)が6床で構成されており、新生児から超高齢者まで幅広い年齢層に対応しています。大学病院ならではの心臓や大血管の大手術後の患者に加えて、一般病棟での管理が困難である重症患者、救急外来(ER)からの急性期重症患者等多彩な患者を受け入れてきました。さらに、2024年の救命救急センター開設をうけて、さらに臨機応変に重症患者を受け入れています。集中治療を専門とする専従医師が日勤、夜勤を担当し診療を行います。各診療科医師、看護師、臨床工学技士、薬剤師、栄養士と緊密に連携をとり、時に熱い議論をしながら治療方針を検討します。
集中治療は、COVID-19禍において認知度があがり、2023年より厚生労働省の医師届出表において集中治療科が掲載されました。当院においても、救急医療科と連携しCOVID-19禍に対応しました。今後、さらに集中治療の進歩に貢献しうる組織をめざしています。実践に役立つ教育を意識しており、初期研修医、学生、看護師向けに人工呼吸器の設定や肺エコー、血液ガスの見方などのレクチャーを常時行っており、日々レベルアップを目指しています。
ペインクリニック
当院では、超音波装置を用いた神経ブロックや透視下神経ブロックと薬物療法を組み合わせ、さまざまな痛みの軽減を目的として、病態の診断と治療を行っています。
現在、積極的に行っているもののひとつに、術後痛への取り組みがあります。急性期には、周術期麻酔部門と連携し、多職種チームによる術後痛管理サービスを展開しています。近年、術後痛が長期化する術後慢性痛が問題になっています。急性期治療から継続的に介入することで、術後慢性痛に早期から対応できる体制をとっています。現在はいくつかの術式に限定して行っていますが、今後は対象術式を拡大し、術後患者の長期予後に貢献したいと考えています。
【神経ブロック治療について】
神経ブロック治療は、神経や神経の周辺に局所麻酔薬を投与し痛みをとる治療法です。複数回神経ブロックを繰り返しても一時的な効果しか認めない場合は、パルス高周波法、高周波熱凝固法、アルコールブロックなども実施しています。
・高周波熱凝固法: 70-90度の熱を神経に加えることで、神経を変性させ長期間鎮痛効果をもたらす方法です。
・パルス高周波法:特殊な針と装置を用いて高周波電流を間欠的に神経へ通電することで長期的な鎮痛効果を得る方法です。高周波熱凝固と違い、筋力低下を生じる可能性は極めて少なく、さまざまな部位の痛みに治療効果を発揮します。
【当科で行っている神経ブロック】
星状神経節ブロック・硬膜外ブロック・神経根ブロック・三叉神経ブロック・椎間関節ブロック・関節腔内注射・交感神経ブロック
緩和医療
身体症状の緩和と意思決定支援を目的に、年間300人以上の新規患者の診療にあたっています。がん患者さんの7~8割が経験するがん疼痛の治療では、神経ブロックや鎮痛薬など、麻酔科医の知識や経験を活かして積極的な治療を行っています。
◆小児緩和ケア◆
当院は全国15ヶ所ある小児がん拠点病院であり、小児緩和ケアチームとして固形がん、血液がんの疼痛管理、症状コントロールに関わっています。
◆非がん疾患の緩和ケア◆
昨今、非がん疾患にも緩和医療が拡大されており、心不全の緩和ケアも注目されるようになってきました。当院でも緩和ケアチームの介入依頼があります。呼吸苦や、体液貯留にともなう倦怠感への対応や、意思決定支援を行っています。
◆緩和ケア病棟◆
2014年に開設された緩和ケア病棟は、年間約170人の終末期がん患者さんを受け入れ、私たちが主治医として最期の大切な時間に関わっています。緩和ケア病棟入棟前から併診医として患者さんを診察することも多く、より早く症状緩和を行い、より深く患者さんのことを理解し、緩和ケア病棟で質の高い時間を過ごしていただけることは、当科の大きな特徴です。